人口減少が進む中、多くの自治体が移住・定住施策に力を入れています。一方で、「空き家バンクを整備したのに物件が集まらない」「相談窓口はあるのに移住につながらない」といった声も少なくありません。
制度を整えるだけでなく、それを誰がどう運営するかが成果を分けるポイントです。本記事では、移住支援で成果を上げている先進地の現場を学べる視察プランを5件ご紹介します。
移住支援のカギを握る「空き家」と「担い手」
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と、いずれも過去最高となりました。地方では空き家が増える一方で、移住希望者が「住める物件が見つからない」という状況も起きており、空き家を移住の受け皿に変える仕組みづくりが急がれています。
国も、2023年の空家法改正で、市区町村が空き家の活用に取り組む法人を「空家等管理活用支援法人」に指定できる制度を設けたほか、総務省の「特定地域づくり事業協同組合制度」によって、地域で働く人材の確保を後押ししています。行政だけで抱え込まず、民間の担い手と役割を分け合う官民連携型の移住支援が広がりつつあります。
空き家バンク運営から仕事づくりまで、移住支援の先進事例5選

【千葉県市原市】合同会社開宅舎
4年間で30組50人の移住者を受け入れ。空き家の掘り起こしから移住者の受入れまでを学ぶ。
市原市加茂地区で、空き家と移住希望者のマッチング事業を行う開宅舎。地図を片手にまちを歩き、1軒ずつノックして空き家を確保する独自の手法「開宅」で、2021年からの4年間に35軒の空き家を開宅し、30組50人の移住者を受け入れてきました。取得した空き家を片付け、修繕して貸し出し、その賃料収入で活動を続けるビジネスモデルも特徴です。スライド講義に加えて、開宅中の空き家や、空き家を活用している事業者の現場を案内してもらえます。
得られる学び
・市場に出回らない空き家を掘り起こし、移住者の住まいにつなげる手法
・地域への入り込み方と、行政と民間の役割分担
・賃料収入で回る、持続可能な空き家活用のビジネスモデル
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4年間で30組50人の移住者を受け入れ。空き家の掘り起こしから移住者の受入れまでを学ぶ。

【長野県上伊那郡辰野町】株式会社goodhood
人口1.8万でも年間約50軒が流通。空き家バンクの運営ノウハウプラン(現地プラン)
辰野町の空家等管理活用支援法人として、空き家バンクの運営を担うgoodhood。町から空き家バンクの運営管理を含む移住・定住関連業務を受託し、行政職員と役割分担しながら運営する体制を築いた結果、年間50件以上の空き家が登録され、登録物件の約75%が成約に至っています。空き家オーナーへの対応や物件の掘り起こし、移住希望者への空き家案内、移住体験住宅の運営まで、幅広い実務を担っています。
講師は地域おこし協力隊として空き家バンクの運営に携わった後に同社を創業しており、行政と民間の双方を知る立場からの話が聞けます。事前に関心事項を伝えれば、自分たちの地域の課題に合わせた内容で説明してもらえるのも魅力です。
得られる学び
・空き家バンクに物件が集まり、成約につながる運営体制
・空き家所有者や不動産事業者との関係構築の進め方
・担当職員だけに頼らない、官民連携による運営の仕組み
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人口1.8万でも年間約50軒が流通。空き家バンクの運営ノウハウプラン(現地プラン)

【新潟県三条市】きら星株式会社
ものづくりのまちに人を呼び込む移住コンシェルジュの取組を学ぼう
「地方で暮らす人を増やし、消滅可能性都市をなくす」を掲げるローカルベンチャー、きら星。自治体の移住相談窓口を受託運営し、仕事・住まい・子育て・買い物環境・病院など、移住に関する相談にワンストップで対応しています。三条市から受託した移住コンシェルジュ業務では、150名以上と面談し、26名の移住を実現しました(2024年1月時点)。
地方暮らしのメリットだけでなくデメリットも正直に伝えてミスマッチを防ぎ、移住者が地域に溶け込むところまで伴走するのが特徴です。活動拠点となる複合交流施設「三-Me.(ミー)」は、空き家を一棟丸ごとリノベーションした施設で、移住者向け住宅も備えています。
得られる学び
・移住相談窓口の受託運営と、ワンストップ支援の進め方
・ミスマッチを防ぐ面談・現地案内の工夫
・移住者が地域のコミュニティに溶け込むためのサポート
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ものづくりのまちに人を呼び込む移住コンシェルジュの取組を学ぼう

【島根県隠岐郡海士町】海士町複業協同組合
【海士町】複業組合研修プラン|AMU WORKに学ぶ、特定地域づくり事業のリアル
人口約2,300人の離島・海士町では、働き手不足という課題に応えるため、2020年に海士町複業協同組合が組織され、全国に先駆けて特定地域づくり事業協同組合の認定を受けました。職員(AMU WORKER)は、漁師、水産加工、ホテル、飲食店など複数の職場を組み合わせて働き、島で暮らしながら働く人の受け皿になっています。
特定地域づくり事業協同組合は、地域外から若者などを呼び込み、安定した働き口を用意することで移住・定住につなげる制度です。令和6年度ふるさとづくり大賞では「明日への希望賞(総務大臣表彰)」を受賞しました。事務局によるプレゼンテーションに加え、実際に働くAMU WORKERへのヒアリングや、はたらき先を巡る町内案内も含まれています。
得られる学び
・特定地域づくり事業協同組合の仕組みと、設立・運営のポイント
・複数の職場を組み合わせる「マルチワーク」による人材確保
・実際に働くAMU WORKERの声から見える、現場のリアル
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【海士町】複業組合研修プラン|AMU WORKに学ぶ、特定地域づくり事業のリアル

【富山県南砺市】一般社団法人アキヤラボ
【国土交通省不動産業アワード受賞】空き家×起業者とのマッチングを定着させるプロセスデザインを学ぶ
井波彫刻で知られる旧井波町で、空き家を通じて「何かをはじめたい」人をまち全体で応援する仕組みづくりに取り組むアキヤラボ。活動エリアを半径500mの徒歩圏内に絞り、足で空き家を掘り起こす「地上戦」と、WEBやSNSで町のビジョンを発信する「空中戦」を両輪に、2021年から2025年の5年間で54組の起業者・事業者を空き家と結びつけました。この取り組みは、国土交通省の「第4回 地域価値を共創する不動産業アワード」で大賞を受賞しています。座学に加えて、空き家を再生した店舗をめぐるまち歩きで、まちの変化を肌で感じられます。
得られる学び
・空き家と起業希望者をつなぐ「プロセスデザイン」の考え方
・譲渡型賃貸や借地権付き建物売買など、所有者と起業家双方の悩みを解く契約の工夫
・開業前から地域に応援される関係性のつくり方
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【国土交通省不動産業アワード受賞】空き家×起業者とのマッチングを定着させるプロセスデザインを学ぶ
終わりに
移住支援の成果は、制度をつくるだけでなく、空き家の掘り起こしや移住相談、仕事の受け皿づくりといった現場の運営で決まります。今回ご紹介した5つの事例は、いずれも行政と民間が役割を分け合いながら、移住者を地域に迎え入れる仕組みを築いてきた先進地です。空き家バンクの運営や移住施策の見直しを考えている方は、ぜひ現地で実践者の声に触れてみてください。
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