人口減少が進むなか、「移住者を増やす」だけではない地域づくりの考え方として、「関係人口」という言葉を耳にする機会が増えています。
2025年に閣議決定された国の「地方創生2.0基本構想」でも、関係人口の拡大は重要な施策の一つに位置づけられました。とはいえ、「言葉は知っているが、何から始めればいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、関係人口の意味や注目される背景、地域で関係人口を増やすためのステップを分かりやすく解説します。
関係人口とは
総務省は、関係人口を「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域と多様に関わる人々」と説明しています(出典:総務省「関係人口ポータルサイト」)。地域との関わり方で整理すると、次のようになります。
・定住人口:その地域に住んでいる人
・交流人口:観光などで一時的に訪れる人
・関係人口:住んではいないが、継続的に地域と関わる人
たとえば、週末に通って農作業やイベントを手伝う人、ふるさと納税で特定の地域を応援し続ける人、副業やテレワークで地域の仕事に携わる人などが関係人口にあたります。
住民票を移さなくても、地域の担い手として力を貸してくれる存在であり、将来の移住につながる「入口」としても期待されています。
関係人口が注目される背景
関係人口が注目される背景には、人口減少や高齢化による地域の担い手不足があります。地域の産業や行事、コミュニティを支える人が減る一方、移住者を増やす取り組みだけで課題を解決するのは容易ではありません。
そこで、住む場所を変えずに地域の活動や仕事に継続的に関わる人とのつながりが重要になっています。また、副業・兼業やリモートワーク、二地域居住など、働き方・暮らし方の多様化も、地域との新しい関わり方を広げています。
国土交通省が2025年6月に公表した「地域との関わりについてのアンケート」(2023年度調査)によると、全国の18歳以上のうち、特定の地域に継続的に関わる「関係人口」は約2,263万人(約22%)と推計されています。内訳は、現地を訪れる「訪問系」が約1,884万人、現地を訪れずに関わる「非訪問系」が約379万人です。
一方、2025年6月に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」では、今後10年間で関係人口を実人数1,000万人、延べ人数1億人創出する目標が示されました。これは、住所地以外の地域に継続的に関わる人を登録し、そのつながりを見える化する「ふるさと住民登録制度」などの施策を通じた目標です。実人数は重複を除いた人数、延べ人数は1人が複数の地域に登録する場合も含む人数を想定しています。
国土交通省の約2,263万人はアンケートに基づく全国の関係人口の推計値であり、政府目標とは集計対象や方法が異なるため、単純には比較できません。人口が減っても、地域外の人の力を借りて担い手を確保し、地域の活力を保つ。そのための手段として、関係人口づくりに取り組む自治体が全国で増えています。

地域で関係人口を増やす3つのステップ
地域と接点を持った人が、すぐに地域の担い手になるわけではありません。関係人口を増やすには、地域と地域外の人が「つながる」、その「関係を育てる」、地域の課題に「ともに取り組む」という3つの段階を意識することが大切です。互いの関わりを少しずつ深めることで、継続的な関係につながります。それぞれの段階で何に取り組めばよいのかを見ていきましょう。
【ステップ1】つながる|地域と地域外の人の接点をつくる
関係人口づくりの最初のハードルは、「地域に関わりたい」という人を受け入れる窓口や仕組みが不足していることです。まずは、地域外の人が気軽に立ち寄り、地域の人やコミュニティを紹介してもらえる入口をつくることが大切です。具体的には、次のような取り組みが考えられます。
・地域の人やコミュニティを紹介する相談窓口・案内役を置く
・コワーキングスペースやカフェなど、地域外の人が立ち寄れる拠点を設ける
・お試し滞在や短期の活動参加など、気軽に関われる機会を用意する
総務省では、こうした役割を担う拠点を「関係案内所」として一覧で紹介しています。
この段階を現地で学ぶなら
神奈川県鎌倉市の「関係案内所はつひので@材木座」は、1925年創業の町の酒屋をリノベーションしたコミュニティスペース兼シェアオフィスです。年間約1,000人が訪れ、地域外の人と地域をつなぐ入口になっています。
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【ステップ2】関係を育てる|継続して関わりたくなる仕組みをつくる
一度つながった人との関係を続け、深めていくには、お互いにとっての「関わる理由」が欠かせません。地域が解決したい課題をそのまま「手伝ってください」と呼びかけるのではなく、関わる人にとっての楽しさや学び、やりがいに変換することがポイントです。
・地域の課題を、参加する人にとっての「学び」や「体験」として企画する
・住民自身の言葉で地域への思いを発信し、共感や愛着を育てる
・一度きりで終わらせず、再訪や継続参加につながる仕組みをつくる
この段階を現地で学ぶなら
島根県邑南町では、空き家の改修現場をDIY愛好家の学びの場として開く「おおなんDIY木の学校」など、地域の課題を「関わる価値」に変える取り組みを重ねてきました。町のモデル事業の企画・運営を支援したエブリプラン(島根県松江市)から、取り組みを仕組み化するまでのプロセスを学べます。
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【ステップ3】ともに取り組む|地域の課題や未来に一緒に向き合う
関係人口づくりの先にあるのは、地域外の人とともに、地域の未来をつくることです。関わりが深まった人が、地域の仕事や事業、教育などに参画できるようになると、関係人口は地域の担い手として大きな力になります。そこから移住につながるケースもあります。
・副業や複業、プロジェクトへの参加など、地域の仕事に関われる仕組みをつくる
・教育や人材育成を通じて、若い世代と長く続く関係を築く
・地域を離れた後も関わり続けられる「還流」の仕組みをつくる
この段階を現地で学ぶなら
島根県隠岐郡海士町は、島外から生徒を受け入れる「島留学」や、若者が島の暮らしと仕事を体験する「大人の島留学」を通じて、島を離れた後も関わり続ける「還流人口」を生み出してきた先進地です。
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関係人口に関するよくある疑問
Q. 関係人口と移住促進は何が違うのですか?
移住促進は、地域に住む人(定住人口)を増やすことが目的です。一方、関係人口は、住む場所を移さなくても地域と継続的に関わる人を増やす取り組みです。関係人口として地域を知った人が、その後に移住するケースもあり、移住促進の「入口」としての役割も期待されています。
Q. 関係人口と交流人口の違いは何ですか?
交流人口は、観光などで一時的に地域を訪れる人を指します。関係人口は、地域を応援したり活動に参加したりと、継続的に関わる人を指す点が異なります。ふるさと納税のように、現地を訪れなくても関係人口として地域と関わる方法もあります。
Q. 自治体は何から始めればよいですか?
まずは、すでに地域と関わっている人を把握することから始めるのがおすすめです。ふるさと納税の寄附者やイベントの参加者、地域出身者などは、関係人口の候補といえます。そのうえで、この記事で紹介した3つのステップのうち、自分の地域に足りない段階から取り組むと、無理なく進められます。今後創設される国の「ふるさと住民登録制度」の動向にも注目しておきましょう。

おわりに
関係人口は、住む人を増やすことだけにこだわらず、地域外の人と「関わり」でつながることで、地域の担い手を広げていく考え方です。「つながる」「関係を育てる」「ともに取り組む」の3つのステップのうち、どこから始めるかは地域の状況によって異なります。実際に取り組んでいる地域の現場を訪れると、自分の地域に合ったヒントがきっと見つかるはずです。
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